武漢ウイルス患者の病理解剖(2)

新型コロナウイルス患者の病理解剖所見

新型コロナウイルス感染病の解剖は設備、解剖医等に対する感染の危険性、死者は直ちに荼毘に付すという社会的な事象などあり、病理解剖の報告は中国発が多いものの、報告例数は非常に少ない。

病理解剖所見は細胞レベルでの病変から病気の進展や治療上有益な情報を与えるもので、日本でも積極的に実施することが重要だと考えます。

今回、専門誌に投稿発表された幾つかの報告を紹介し、実際に体内で何が起きていたのか考えてみたい。

論文1

Zhe Xu et al., Pathological findings of COVID-19 associated with acute respiratory distress syndrome. Lancet Respir Med, 2020, 8,  420-22

症例:50歳男性
   武漢から北京に帰ってきて咳、悪寒があり、次いで発熱、倦怠感、呼吸促拍があり、入院しSARS-CoV-2陽性が確認。
   入院治療を受けたが入院後6日で死亡。
臨床所見:リンパ球減少
     しかし、T細胞の免疫系にたいする過剰反応所見
病理検査材料:全身解剖は行わず、生検材料を肺、心臓、肝臓より採取。
病理所見:肺
     ①びまん性の肺胞傷害で細胞線維粘液滲出物
     ②肺胞上皮細胞の剥離と硝子膜(hyaline membrane)の存在
      (急性呼吸促拍症候群を示す)
     ③浮腫と硝子膜
     ④間質にリンパ球を主とする細胞浸潤
     ⑤肺胞内に肥大した肺胞上皮細胞による合胞性多核細胞の出現
      多核細胞の特徴は、ウイルスによると思われる明瞭な核小体をもつ核肥大と不定形の顆粒状の細胞質。
     肝臓および心臓
     ①コロナウイルスに特異的と断定できる所見はなし。

論文2

Sufang Tian et al., Pulmonary Pathology of Early-Phase 2019 Novel Coronavirus (COVID-19) Pneumonia in Two Patients with Lung Cancer.
J Thoracic Oncology, 2020, 15(5), 700-704

症例:偶然にも肺がんのため肺切除を行ったが、その後武漢ウイルス陽性反応が確認された2症例。
症例A:84歳女性
臨床所見:高血圧と2型糖尿病
     右肺中葉に肺腺癌、両肺にすりガラス状不透明病変
     がん病巣切除まで健康状態良好(発熱、呼吸器症状なし)
     術後、リンパ球減少、喘鳴、次いで呼吸困難、胸部圧迫感、空咳
     COVID-19ウイルス陽性が確認
     酸素分圧低下し入院後29日に死亡
病理所見:右肺中葉切除組織
     ①肺胞浮腫とたんぱく性滲出による肺胞傷害
     ②肺胞内に限局性に単核細胞や多核巨細胞を含むフィブリン塊所見
     ③肺胞上皮細胞の過形成と間質肥厚
     ④ウイルス封入体を疑わせる肺胞上皮

症例B:73歳男性
臨床所見:高血圧
     右下葉に肺腺癌
     肺腺癌病巣切除後、左右上葉にすりガラス所見
     発熱、空咳、胸部圧迫感、筋肉痛
     COVID-19ウイルス陽性(インフルエンザウイルス陰性)
              同室内のウイルス陽性患者から感染
     以後回復
病理検査材料:肺がん切除組織  
     ①たんぱく質とフィブリン滲出物
     ②間質に線維芽細胞とII型肺胞上皮細胞の過形成による肺胞壁の肥厚
     ③線維芽細胞や多核巨細胞の出現    

CT像
症例A:術後1日、両肺ともすりガラス状の不透明域が増大(→)
症例B:両肺にすりガラス状巣が認められる(→)
症例Aの肺の組織所見
A:肺胞内にタンパク質性の浸出液 B:散在性にたんぱく質の塊(→)
C:肺胞内のフィブリンに初期基質化、単核球や多核巨細胞の浸潤
D:肺胞上皮細胞の過形成とウイルス封入体と思われる細胞(→)
症例Bの肺の組織所見
A:顕著なたんぱく質とフィブリンの滲出 B:びまん性の肺胞壁や中隔の線維芽細胞の増殖、II型肺胞上皮の過形成(びまん性肺胞傷害の初期変化)
C:間質に線維芽細胞増殖栓(→) D:多数のマクロファージの浸潤とII型肺胞上皮の過形成

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